お客様インタビュー|【ものづくりの想い】
大切な人に向き合う時間を届ける
——「祈りの道具屋 まなか」のこだわりと素材への追及
現代の住環境に馴染むシンプルで温かみのあるお仏壇や仏具を提案する「祈りの道具屋 まなか」様。
今回は、FilBridgeが製作をサポートさせていただいた「敷布(しきぬの)」について、デザイナーの石川さんにお話を伺いました。
フレンチリネンという天然素材へのこだわりや製造過程での裏話まで、ものづくりのストーリーをお届けします。

現代の住まいに馴染む仏壇・仏具
――まなかさんのお仏壇や仏具はすごくシンプルで、現代の生活の中にスッと馴染みますね。
石川さん:
弊社は「祈りの道具屋」として、平素、お仏壇や供養台、仏具などを製作、販売しています。大切な人を亡くしたとき、心にぽっかりと穴が開いてしまったときに寄り添えるような仏壇仏具を作っていきたいと考え、東日本大震災(3.11)をきっかけとして始まりました。
形式的なことにあまりとらわれすぎずに、現代に暮らす方々が毎日少しの時間でも大切な方と向き合う時間を作れたら、という思いがあります。たとえば、屋根をなくしたお仏壇がありまして。ラフに立ってお祈りすることもできれば、対面してお祈りもできるようなものもあります。そういった日々の行為をお手伝いできるような仏壇・仏具を作っています。
――昔ながらのお仏壇はボリュームもありますし、どんどんコンパクト化している現代の住宅では、存在感がかなり大きいですよね。
石川さん:
都心を中心に住居もコンパクトになり、従来のようなお仏壇を置く専用スペースをお持ちの方は少なくなっています。そのため、棚の上に置けるようなコンパクトなお仏壇や、北欧テイストを取り入れたデザインを製作したりと試みを重ねていますが、日常に馴染ませる塩梅は常に難しい課題ですね。
お仏壇を引き立てる「敷布」の役割とこだわり
――今回、FilBridgeと一緒に作らせていただいた「敷布」というものは、どういった使われ方をするものでしょうか?
石川さん:
お仏壇の一部として、プラスワンをする付属品という位置付けです。用途としては、仏壇とその上にのせる仏具の緩衝材のような機能があり、コーディネートに彩りを加えてくれる存在でもあります。仏具は硬い金属で作られていることが多いので、仏壇に強くあたって傷つけないようにするという、コースターのような役割ですね。
以前からお仏壇とセットで販売をしていたのですが、これまでのものが生産できなくなり、作り直すことになりました。そこで改めて、この「敷布」というものの用途の可能性や、サイズ感も見直しました。
お仏壇に絶対に必要なわけではないけれど、プラスすると色彩りを加えてくれて、長く仏壇を使うことができる。敷布は単体で成立するものではなく、お仏壇やお位牌と組み合わせて成り立つものです。既製品は種類が多くなく、かといってラフすぎると雑貨のようになってしまう。あくまで「仏具」としての静謐な雰囲気にこだわり、これを使ってお祈りをしたいと思ってもらえる製品を目指しました。

素材選定:天然素材「フレンチリネン」を選んだ理由
――今回は敷布にフレンチリネンという生地を使用しましたが、この布でやろうと思われたのは何がきっかけだったのでしょう?
石川さん:
供養具だからこその静謐性や厳かなニュアンスは大切にしたいと思っていました。暮らしに馴染ませようとカジュアルにしすぎず、高級感や静謐さとのバランスを取りたい。
素材選びでは、そのバランスを大事に、たくさんご用意いただいたfilbridgeさんの生地サンプルを見ながら選びました。
フレンチリネンにすることで、あたたかみのある風合いを生かしつつ、縫い目のない「圧着技法」を採用してシームレスにすることで、高級感とモダンさを目指しました。生地感のあたたかみと製法のミニマムさで、よいバランスに仕上げていけないかなと。
――生地にも裏表がありますが、今回は「こちらのほうを表に」というご希望もいただきましたね。細部までしっかり見られていることに感動しました。
片面が少し起毛したような感じで、そちらもふわっとして優しくてよかったのですが、長く使っていくうちにもしかしたら起毛部分が毛玉になったりする可能性もあるのかなという面を考えたりもしました。感覚的なところもあると思うんですけれど。
既存品でも麻を使っていたんですが、それは帆布のような感じの、しっかりとした麻素材だったんですね。その風合いは生かしつつ、イミテーションではないものを使いたいと思っていたので、天然素材がいいなという気持ちがありました。
ブランドの思いも含めて(filbridgeの)佐々木さんにお伝えし、お取り扱いされている麻などの生地をたくさん見せていただいて、今回使用するフレンチリネンが柔らかくて優しくて、現代の日常空間にもモダンに馴染むと感じて選ばせていただきました。
――かなりの数の生地をご覧になったかと思いますが、生地はスムーズに決まりましたか?
たくさんの生地をご用意いただいたので、生地選び自体はスムーズに決まったんですが、カラー選びに時間かかったかもしれません。予算の都合上、多くのカラー展開は難しかったため、悩みに悩んで「ベージュ」「オリーブ」の2色に決定しました。

縫い目のない圧着技法でミニマルな印象に
――サンプル確認や生地選定の中で、なにか印象的だったことはありますか?
一度、圧着技法で進めることが決まったあと、予定していた職人さんが体調を崩されて加工ができなくなってしまったことがありましたよね。天然素材に圧着技法を施せる国内の業者さんは非常に少ないと聞き、それはもう仕方ないかな、違う技法を考えないといけないなと思っていたんですけれど、filbridgeさんのコネクションのおかげで早急に別の業者さんに繋いでいただいて、希望する技法でできたということがありました。そこがすごく印象的でしたね。
――国内の工場はご高齢の方が一人で運営されているケースも多く、心配をおかけしてしまいましたが、無事に理想の形で仕上がり安心いたしました。縫い目がない「圧着技法」にこだわられた理由はどこにあったのでしょうか?
縫い目(ステッチ)がないことで、ミニマルで洗練された印象にまとまるなと考えました。中にスポンジを入れていただくことで、ちょうど良い厚みと重厚感も生まれました。
――手縫いや縫製には人の手ならではの温かみがありますが、どうしても僅かなズレやほっこりとする感じが出ます。それがよくはたらくこともあれば、洗練されたミニマルさを表現したいときは不要だったりもします。まなかさんのお仏壇や仏具には、縫い目のない圧着技法はとてもしっくりときますね。

完成した「敷布」の仕上がりと反響
ーー実際に完成したものをみて、いかがでしたか?
石川さん:
天然素材ゆえのシワが量産時にどう出るか、わからないところがあったので、期待半分心配半分のような感じだったんですね。
もちろんサンプルでしっかり、こういうふうになりますというのは見させていただいていましたし、シワも最初はプレスでしっかりと伸ばしていただいたのですが、それだと風合いが減ってしまうから、手作業でのアイロンがけだけにしてもらったりと微調整も行いました。
仕上がった商品は、 型を使用した安定的なピッシリとしたシルエットでありながら、リネンという天然素材のシワ感が美しく残っていましたね。洗練されたフォルムと、布のあたたかみのバランスが本当によかったです。
すでに店舗ではお客様にもご覧いただいているのですが、お仏壇や仏具との相性もよく、お客様からもご好評をいただいています。